074. トキ(ペリカン目トキ科)

トキ繁殖羽(写真:大関豊)


飛翔姿形(写真:大関豊)


ドジョウを食べるトキ(写真:大関豊)
佐渡ヶ島にて最後の5羽と言われるトキを捕獲し人工繁殖を進めるも日本産のトキは2003年に絶滅しました。絶滅といっても野生のトキの絶滅であって種その ものの絶滅とは考えていないようです。トキの分布域は東アジアの東北部に限られ、日本、朝鮮半島、中国の東部、沿海州の一帯に生息していたとされ繁殖が確かめられて いたのは日本と中国の数か所だけでこれらの種に亜種はなく同一と考えられているからです。中国から借り入れで人工孵化に成功したのが1999年、以降、順調に 繁殖に成功し現在(2017年6月)では270羽が放鳥されて野生復帰の取り組みが行われています。(佐渡トキ保護センター資料より)

全長約75センチ、羽色は全身いわゆるとき色がかった白色ですが、成長は繁殖期になると冠羽、頭、くび、胸、背中が濃い灰色を帯びてきます。顔の大部分は羽毛が なく、濃赤色の皮膚が露出しています。くちばしは黒く先端部だけは赤く、光彩と足も赤色です。
どちらかというと憶病で人の近づかない山林中に生息し、付近の渓流や山間の水田でカエルやドジョウ、タニシ、サワガニ、昆虫などを 食べ、繁殖期にはふつう単独かつがいでいるが秋から春までは小群で生活していて渡りはせず、留鳥(ほぼ一年中同じ場所で暮らす)とあります。
昔は、北海道以南の日本各地にかなり普通に住んでいたらしいのですが、乱獲などの結果、明治の中期にはほとんど姿を見た人がいないような状態になってしまったよう です。昭和9年に天然記念物、昭和27年には特別天然記念物に指定、昭和35年には国際保護鳥に選定され、昭和42年に佐渡の新穂村にトキ保護センターが開設 、昭和56年に佐渡に残っていた野生のトキ5羽を一斉捕獲し人工飼育と繁殖に踏みきり、平成11年人口孵化に成功します。
現在では、野生復帰の為の放鳥数が270羽を超えて佐渡に行けば野生で暮らすトキに会えますし、本土にもやって来るものも現れました。長野県では2009年3月に 木島平で目撃されましたし、近年では2018年5月に塩尻に、そして、2021年5月15日に安曇野市(豊科光)に飛来しました。(文:大関豊)

留鳥(安曇野:1917年11月美麻村で捕獲、現在大町高校で剥製所蔵の記録あり)
L75cm、W140cm
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